はじめに

バラの木靴 私には絵心がないから・・・と言う言葉をよく耳にします。

絵心って何のことだろう?と私は思います。

 人は、胸がいっぱいになるような感動や喜びや悲しみを、言葉以外の形で表現したいと思うことがあります。
幼い頃私たちは様々な感情を、歌ったり、踊ったり、絵に描いたりして表現してきました。ところがいつの頃からか、それは音楽や体育や美術という形で分けられ、、はたまた他人と比べられ、競争にまでなり、点を付けられ、すっかり自信を失ってきたのではないでしょうか。
絵心がないというのは、(絵で表現する自信をなくしてしまった)ということなのではないかと私は思います。
だから、ただ(好きなように自由に描きなさい)と言われても、自信を失ってしまった私たちが(何をどう描いていいのかわからない)というのは当たり前だと思います。

ゼラニウム
 フォークアートペインティングがとても上手な方の中に、(学生の頃、美術は全然だめだった)という人がよくいます。
なのに何故そんなに上手なのでしょう。
このクラフトに図案があり、模写だからでしょうか・・・。
それだけではないと私は思います。
それはこのペインティングが、たとえばバラの花はこのような筆使いでこう描くといったように、絵一つ一つの描き方を伝えてくれるものだからだと思うのです。
 18年前、オランダのフォークアートペインティングである”アッセンデルフト”を知りました。のびのびとした筆運びで花を一つ一つ学び、描けるようになっていく自分に驚きました。そして当時、仕事や子育てで疲れ切った心が解放されていくように感じたことを、今でも覚えています。
 フォークアートペインティングの世界も、ただ綺麗に真似て描く技術だけが先行し、オリジナルはなかなか難しいという問題は感じます。でも、”絵で表現できる”という自信を回復していくきっかけになる、と考えています。


 今から300年以上前、ヨーロッパの農民達が雪深い冬の中で春を待ち望み、家具やベットに華やかな絵を描いた・・・・・フォークアートペイントのそんな歴史に心惹かれます。
 私は1994年信州の片田舎に引っ越し、りんごやお米栽培の農業をしています。雪にすっぽり埋もれた植物達が雪解けと共に力強く芽吹き始めるのを知り、自然のダイナミズムを日々肌で感じる中、昔の農民達の思いにほんの少し触れることが出来るかな、と思うようになりました。
 
 松本キミ子さんという画家に、(絵は自由に描くのではなく、自由になるために描くもの)と教えてもらいました。
アッセンだけでなくトール、水彩・・・・自信をつけ、自分のオリジナルを創り、自由になっていけたら・・・・・・そんな思いで絵を描き、教室も始め、今仲間といっしょに学んでいます。

 こんな私の経過を、ホームページにまとめてみました。どうぞご覧下さい。

(以下はフォークアートペインティングについて簡単に紹介します。)



フォークアートペインティングとは
ティッシュボックスヒンデローペン 家庭にある身近な生活用品、道具、家具などに手描きで絵を描いていくクラフトです。このクラフトは、約300年前からヨーロッパの農民達の間で広まり、今も続いています。

 またアメリカでは、西部開拓時代にペンシルベニアに渡ったドイツ系の人たちが、ブリキの道具に絵を描いたことをきっかけとして広まりました。そしてその後、いろいろな生活用品などにも描くようになり、30年ほど前に、トール・デコラティブペインティングとして造語され新アートになったものです。(トールは英語でTOLEと書きますが、これはフランス語のto^le(=薄い鉄板)からきています。)

フォークアートペインティングの代表的な技法

国名 技法名 特徴
フランス フレンチ・フローラルス 今もフランスに伝わる技法。ソフトな色味、色を重ね濃厚でリアルな花を描く
イギリス チッペンデール イギリスのチッペンデール地方に伝わる技法。フランスのフレンチフローラルの影響を強く受けている。
オランダ アッセンデルフト オランダのアッセンデルフト地方に伝わる技法。のびのびした筆使いと、鮮やかな色合い。
オランダ ヒンデルーペン オランダ、ネーデルランド地方に伝わる技法。ヒンデルーペンは町の名。元々はシンプルな色合い。当初は、動物の血液と卵をにかわで練り合わせたものを、絵の具にしていた。
ドイツ バウエルンマーレライ ドイツ・スイス・オーストリアなどで生まれ、300年以上の伝統を持つ。家具職人が作ったベットや家具に、その土地の農民が厳しい冬の日々の中で、絵を描いて楽しんだ。バウエルンマーレライには(農婦の絵)という意味がある。
ノルウェー ローズマーリング (花の絵)という意味を持つ。農家などの家内用装飾や木製食器の絵付けに利用。正確に計算された模様が中心。
ロシア ロシアンフローラル ロシアのゾストヴァ地方に伝わる伝統技法。油絵の具を使い、強い色調やコントラスト、細かい線模様で描かれている。

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